ワクチンと戦後日本神話の行方
先日宮内庁長官から発せられた天皇陛下のお心ご推察について、ネットを主戦場として喧々諤々の議論の応酬が起こりました。
また、コロナワクチン担当の河野大臣によるワクチンに対するデマ断定の発言についても、悪意を込めた煽りを含め議論が盛り上がりました。
その後も早くワクチンをうたないとワクチンが無くなってしまいますよ、とかワクチンパスポートの予定というようなワクチン接種を急かすような情報が政府やその周辺から発せられ、それに対してワクチン接種慎重派がネットで押収するという図が連日のように起こっています。
またオリンピック開催についてもネットでは激しい議論が続いています。
そんなネットでの議論を見て、ここにきて急速に高まっているある傾向が気になりました。
それは日本の権威に対する信用失墜です。
確かにこれまでも政府に批判的な人たちを中心に政治行政に対する不信はありました。
しかし今回は様相が違うのです。
コロナやワクチン、更にはオリンピックに対する発言や対応をもとに、広く一般的な人たちが政治、行政、医師、学者、マスコミ、大企業、著名人といったいわゆる日本の指導層、頭脳、先進的な考えの持ち主といったようなその道の権威的な位置づけにいる人たち全般に対して不信感が出てきているのです。
不信感の内容は、コロナワクチンやオリンピックといった喫緊の課題に利害関係がありそうな(特に利益を受けそうな)人達や組織の一部が、人の命を御座なりにして自分たちに都合の良いように嘘をついているのではないかというものです。
こういった心理を背景とした意見が天皇陛下や河野大臣の一件を契機として吹き出してきてように見えます。
このようなウエーブが一時的なものなのか長く続くかはまだ不透明ですが、一度失った信用はこの不信がこと健康や命に関する事案から出てきたものですので容易に回復することはないかと思われます。
今回の不信の対象となっている人や組織はいずれも戦後日本社会を支える屋台骨になってきたところです。
いわば戦後社会における価値神話の中心部分です。
ここの信用が崩れる、すなわち数多くの極々普通な一般大衆の中にある神話が崩れたら、現在の日本社会は求心力を失い急速に立ちいかなくなり、社会の再構築が必須になるかもしれません。
もしかしたら近未来に社会的生活的防衛自警団のような草の根互助連携コミュニティのようなものが必要になってくるかもしれないのです。
私の専門分野である不動産も文字通り戦後の持家土地神話が終焉を迎え、新しい価値観の模索すなわち土地親和へと向かことになると、私は見ています。
土地神話から土地親和です。
世の中は踊り場を迎え、次の時代へ向かう準備を静かに行っているのかもしれません。