鈴木 優 土地親和論

鈴木優は、「土地親和論」を提唱し次世代における新しい社会創造のためには「地と人が一体であること」を実感することの大切さを説く。不動産鑑定士。不動産コンサルタント。

土地親和論 ‐ ついに心とモノのバランスをとるものとして( ⑨ 次世代に向けた日本の可能性 )

今回は土地親和論の可能性と日本をテーマにして書いてみたいと思います。

 

今後自我が膨張して形成された現代社会から意識と無意識が繋がった社会へと移行する過程においては、激しい社会的混乱が訪れることは必定です。

既にコロナの出現によりその兆候は色濃く出てきていますが、この波はこの後更に大きな社会面かつ人間の心理面の混乱へと繋がって行くことは避けられないと考えています。

アフターコロナでまた今までの世の中に戻るなどということは幻想でしかないのです。

むしろ今まで見えてなかった拝金社会の矛盾が一気に噴き出し、現状の貨幣経済は混乱の極致になるでしょう、しかも近い将来に。

そしてその混乱の中で人々に与えられる大きなテーマの中に、間違いなく人の価値観の変化というものが入ってきます。

従来の社会の仕組みとその基盤となっていた価値観の崩壊と新しい時代の価値観の模索です。

これは多くの人々に不安を与えることにもなります。

そんな時、この不安におびえ茫然自失となった人々がどう一条の光を見つけ、癒され、やがて一歩前に歩み始める勇気を得るか、このことはこれからの人々にとって大きな課題になるでしょう。

そうした時に「土地親和論」の考え方に触れることを契機として「地」に心を向けその母なる温もりを感じていくということは、人々(この中には私自身も含まれています)が癒されまた前を向くことのためには決して無駄にはならないと考えています。

 

また「土地親和論」における人と地などの環境や人同士の繋がりは水平的なものです。

したがって当然この概念から展開される社会創造は環境と共生する水平的なコミュニティを基本とすることになります。

この観点から私は新しい社会創造という観点においても「土地親和論」を展開することは意義あることと個人的には自負しております。

 

ここで土地親和論の考え方に戻ります、

「地と人は繋がっており一体です」

したがって、

「これからは、人はそれを自覚し、地に足を付け、地に感謝し、地を清め浄化し、また地から必要なものを豊かに恵んでもらい、地やその元である地球のありとあらゆる生命やモノ・コトと助け合いながら、また人々も助け合いながら生きていくという哲学を基盤として、新しい社会やコミュニティを皆で知恵や工夫や情報を出し合い創っていきましょう」

ということです。

 

このブログシリーズの「④日本発の意味」で書きましたが、日本人は地や自然の音や気配を聞くことが出来る世界でもまれな能力を持った民族でした。

これは前述の角田先生によればどうやら日本語の構造から来ているもののようです。

このことから上に書いた能力は厳密にいうと日本民族だけの能力ということではなく、成長上影響の強い幼少期から青年期にかけて日本語に慣れ親しみ、かつ日本の土の上で育つなどして標準的な日本人と同質的な心情を持っている人の能力ということになります(ですから日本人が全員この能力を持っているということではない、と同時に日本に若いころから住んで日本語にも慣れ親しんできた西洋や中近東やアフリカの人等の日本人以外の人もこの能力を備えている可能性があるということは、日本の独自性を海外に発信する上で押さえておく必要があるということです)。

そしてその能力の結晶が古来の日本の文化や習慣、考え方、生き方、モノのとらえ方などに表れているということになり、またそのような日本の独自性は自ずと精神面である心と実際の人の物理的生活の接点すなわち意識と無意識の接点や統合といったこれからのテーマに合致しているということになります。

 

一方「土地親和論」は「地と人は繋がっており一体である」という概念であり「地」に心を寄せ「地」の気配に耳をかたむけるという心持ちを前提としているものですので、「土地親和論」が進む先には当然現在では社会の水面下に埋もれてしまった上に書いた日本の独自性の復権というものがついてくるということになります。

私は土地親和論について以前以下のように書きました、ここで引用します、

「従いまして私は「土地親和論」を日本の得意技である和洋折衷・和魂洋才により、ディープエコロジーの概念に日本古来の文化や日本人の心のDNAを基礎として生成される日本的志向を融合して、日本発の次世代に繋げる持続可能社会を創り出すための新時代の共生哲学・社会の概念であるという位置づけで展開していくことにしております」、と。

 

つまり「土地親和論」とは日本の独自性を復権し、その独自性を基礎とした新しい人の価値観や社会の創造の実践に寄与し、その姿を広く国の内外に示すことにより次世代にバトンタッチで出来る世界の再建にも貢献するという、実に遠大な目標にも続く道に繋がっているということになります。

むしろこのことこそが「土地親和論」を展開する真の目的とも言えるのであります。

 

続く