鈴木 優 土地親和論

鈴木優は、「土地親和論」を提唱し次世代における新しい社会創造のためには「地と人が一体であること」を実感することの大切さを説く。不動産鑑定士。不動産コンサルタント。

中国の不動産(その2)

前回のブログの続きになります。

 

恒大集団問題で揺れる中国の不動産市場はどうなるのでしょうか。

 

昨日のブログでも触れましたが、現在の中国の不動産価格は高すぎます。

バブル期の日本の不動産やオランダのチューリップと同じです。

今の中国の不動産の価格水準は、値上がり期待によりあるべき水準より遥かに高くなってしまっているのです。

 

近世以降の歴史において世界の覇権に挑戦した国は、すべてバブルが発生してきたと言っても過言でありません。

上で書いたジャパンアズナンバーワンと言われた日本然り、スペインから独立を果たし世界金融の中心となった16世紀のオランダ然り、また南海バブル事件などが有名なイギリス、大恐慌震源地となったアメリカなど、いずれも覇権に挑戦する過程でバブルが発生しそしてバブルが破裂しました。

その中でイギリスとアメリカは、バブルの破裂を乗り越え世界の覇権国家となりました。

日本やオランダはバブルの破裂を乗り越えることが出来ず、世界の覇権国家にはなりませんでした。

 

今回は、中国が真の世界の覇権国家になるべくアメリカに挑戦している過程でバブルが発生したということかと思います。

そして今そのバブルがつぶれつつあるのです。

ですから、中国の不動産バブルの終焉は単に恒大集団だけの問題ではなく、中国全体の不動産会社の問題ともなります。

今恒大集団にかぶさるように他の不動産会社の経営不安の問題が表面化しているのは当然なのです。

この問題は国全体におよぶ巨大な問題なのです。

 

ただ多くの専門家が指摘するように中国は共産党独裁の国なので、問題先送りや問題の隠ぺいは過去のバブル発生国よりははるかにしやすいと考えられます。

しかし、しかしですね、不動産の値が高すぎるのですからいくら国が頑張ってもいつかは支えられない時が訪れるのです。

不動産は土地の面積×価格ですから同然一つ一つの不動産取引の価格は高額になります。

しかも中国の国土は広いです。

その結果中国における不動産の価格の合計は天文学的水準になるでしょう。

バブルを放置するなり隠ぺいするなりしても、値上がり期待によってあるべき水準よりはるかに高くなってしまった価格水準は、必ずその天井を迎えてしまうのです。

そして一度人々の間の値上がり神話に陰りが燃えると、あっという間に値上がり期待による買い客はいなくなり、その結果本来あるべき価格水準より高いのですから当然価格が下がってしまうことになります。

しかもこの場合不動産は本来売りにくいものですから、取引が成立しないまま気配値だけが下がるという地獄絵図になってしまうのが通り相場です。

不動産の裏側は、それを担保とした資金調達という金融の世界でもありますので当然金融危機に波及するわけですが、上で言った不動産の気配値だけが落ちていくという特性により金融だけのバブル崩壊よりも厄介なものになります。

その結果国に経済の崩壊度合いは深刻になり、国の政情すら不安にしてしまう危険性があります。

 

要は国がいくら支えてもいつかはバブルが破裂してしまうのです。

しかも問題を先送りにすればするほど傷が深くなります。

そうであれば国が先送りにするのは程々にして、意図的に不動産金融を引き締めて傷が大きくならないうちにバブルをつぶし、不動産会社と金融会社の破綻処理を果断に推し進めてしまうということも、国にとっては一つの有力な選択肢になります。

日本はこの破綻処理が遅くしかも不十分だったと私は思っています。

1990年初頭にしておくべきでしたが、当時の利害関係者がそれを到底許せなかったということでしょう。

その結果が失われた30年ですが。

 

今の中国政府は当時の日本の失敗を良く研究していると言われています。

ですから習近平江沢民派や胡錦涛派等の権力闘争の側面を孕みながら、今不動産金融を引き締め恒大集団を始めとする不動産会社を破綻させ、これらの不動産会社の資産を接収して庶民に安く提供して、この危機を乗り切ろうとしている可能性もあると思います。

 

ただ上でも書きましたが不動産の裏側は金融です。

中国不動産のバブル崩壊に伴う莫大な担保消失の影響がどれほどのものか、このグローバル化レバレッジ効きすぎで博打場化した世界金融市場の今後の動向が注目されることになります。

 

今の動きを見ていますと習近平は不動産バブルをつぶす過程で政敵の資金源もつぶし、返す刀で第2の文化大革命をしようとしているようにも見えなくもありません。

つまり実質上の農民主体の共産原理のもとでの鎖国です。

もしこの路線を目指しているとすれば、中国不動産バブルの崩壊は世界金融バブル大崩壊に繋がると、少なくとも習近平は見ているのかもしれません。

もしそうだとすれば、中国不動産の内情を一番よく知っているのは習近平政府でしょうから、今後の世界金融、更には現在の金融資本主義の行く末は非常に危ういものになってきている、という読みも成り立つかもしれません。

この辺りは私もまだ確信は持てませんので、引き続き注視していきたいと思います。

 

ともかく中国の不動産のバブルは破裂に向かっており、しかも一旦破裂に向かった流れは誰にも止められず、またその影響は極めて大きいということは確実です。

中国の不動産関連に投資している人たちは、怖がらずにこの現実に目を向けなければならないということです。

また併せて、世界の人たちも。

 

それでは次に日本や諸外国の不動産の影響についても見てみたいと思います。

 

続く