鈴木 優 土地親和論

鈴木優は、「土地親和論」を提唱し次世代における新しい社会創造のためには「地と人が一体であること」を実感することの大切さを説く。不動産鑑定士。不動産コンサルタント。

土地親和論 ‐ 家は買うべきかの判断(その2)

家を買うことを私があまり勧めない理由を書きます。

 

先ず目に見える物理的な要因から考えてみます。

今後55年体制と言える戦後の所得倍増経済成長型による日本経済の衰退の顕在化を背景として社会構造と産業構造が大きく変化していくでしょう。

この議論に関しての将来への楽観論として「今後移民が…」という議論が良くありますが、私は近い将来現在積みあがっている莫大な世界的金融(不動産)バブルがはじけると見ており、その結果として起こるであろう官民共に借金依存のお隣中韓の経済混乱も重なり、日本に押し寄せる移民(あるいは難民)の様相が現在とは一変する可能性が大きいと見ていますので、軽々に将来を移民頼りにしてはいけないと考えていますし、また現実問題としてそのようには出来ないと見ています。

またそれと並行して技術革新の進行(具体的に言えばAI、ドローン、通信手段、VR、3D、ロボットなどの技術の進展と普及)が想像を超えるスピードで進むでしょう。

またエネルギー供給の方法も技術の革新と社会的混乱の中での人々の価値観の変化を背景として20世紀型の中央集権システムから中小コミュニティあるいは家庭単位の分散完結型システムへと移行し、地方分散型のコミュニティが組みやすくなるでしょう。

これらの結果人も会社も都市に集中して暮らすメリットが急速に失われることになります。

社会的経済的な安定あるいは成功のために現在のように大都市圏に共住するメリットが急速に失われていくということです。

その結果相対的に地価が安く暮らしやすい地方への人の分散の流れが出てくることになります。

 

もし大地震などの大きな災害や深刻な経済不況が起これば、都市部の一部はスラム化するでしょう。

その場合にスラム化する地域は首都圏でいえばいわゆる比較的所得の低い人が多い下町だけでなく、高齢化が進んでいる郊外の住宅街もスラム化する可能性があります。

更にこの場合繁華街の治安も悪化しますので、その周辺にある高級住宅街(例えば東京でいえば西麻布、青山、松濤といった感じでしょうか)もその余波を受けて治安が悪くなる、すなわち地域としての土地の価値が下がるという現象が起こる可能性があります。

要は今高級だと言われている場所もこの先安泰では全くないということです。

因みに湾岸部のタワーマンションは言うまでもありません。

 

また日本の場合少子高齢化の進展により空家が増えますので、家という建物のガラだけ見れば供給過多になります。

これからは家の建築ではなく家の改築が主流になるでしょう。

また同じく少子高齢化の影響による相対的な貧困化によりシェアハウスや江戸時代の長屋のような形態の需要が増え、また介護と賃貸の境目が無くなり長屋や町内の中で助け合い支えあるという形態が出てくる(物理的にそう対応せざる負えない)可能性が高いと見ています。

その結果見た目を気にしなければ家に住むというコストは非常に低いものになっていくということになります(紙幣の擦りすぎにより貨幣価値が下げれば、家関連の見た目の値札はそれほど下がらないかもしれませんが、実質的な価値すなわち他の商品と比較しての相対的な値札の高低感が下がるという意味です)。

何十年も返済しなければならないような借金をするリスクを背負って家をわざわざ買う、その必要性が低くなるということです。

 

これまで家を取り巻く経済的物理的な環境の見通しを見てきました。

無理して家を買うというメリットが低くなっていく可能性が高いことがわかると思います。

それでは人の意識面はどうでしょうか。

 

続く